キャリア教育の事例紹介
未来を地域とともに育む ― 塩尻市「共創共学プラットフォーム」の挑戦
塩尻市では、子どもたちの「社会の中での自分らしい生き方」を育むキャリア教育を推進するため、学校・地域・企業・行政が一体となった「共創共学プラットフォーム」を立ち上げました。本記事では、その立ち上げの経緯や現在の取り組み、成果、そしてこれからの展望についてご紹介します。
立ち上げの経緯
これまで塩尻市では、学校ごとに特色あるキャリア教育の取組みを進めてきました。しかし、担当教員の異動や地域や企業等とのつながりが単発的に終わるなど、継続性や学習の深まりの面で課題がありました。
こうした状況を背景に、2023年度に塩尻市と塩尻市教育委員会がともに策定した「第二次塩尻市教育振興基本計画」においてキャリア教育を重要施策に位置づけ、キャリア教育を更に推進していく方向性が打ち出されました。
その取組の1つとして、2024年度から本格的に動き出したのが「共創共学プラットフォーム」です。塩尻市教育委員会は事務局運営をNPO法人に業務委託し、産官学民をつなぎ、学校や先生の負担を軽減しながら地域全体で子どもを育てる新しいモデルがスタートしました。また、塩尻市教育委員会において「キャリア教育グランドデザイン」を策定することで、目標や方向性を共通理解しながら支援をしています。
【塩尻市の探究型キャリア教育】※塩尻市キャリア教育グランドデザインより抜粋
これまで
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Case 01
職業調べや企業見学、職場体験、各種体験のみを実施してキャリア教育とする
課題
- キャリア教育では職業や企業等を知ることだけを目指しているのではありません。
- 働く意義は何か、働くことを通してどのような自分らしい人生をおくりたいのかを考えていくことが大切です。
- 体験や活動あって学びなしにならないことが重要です。
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Case 02
進学先調べや受験のための勉強、進路指導を持ってキャリア教育とする
課題
- 進路指導はキャリア教育の一部にすぎません。
- 進路は年々多様化しており、数ある選択肢の中から自己決定していく必要があります。
- 夢や目標、キャリア設計をもって勉強、進学することが重要になります。
これから
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Point 01
学習過程を探究(的)にする
事前事後学習を充実させる- 日常生活や社会に目を向け、児童・生徒が自ら課題を設定します。
- 探究の過程を意識します。
- 自らの考えや課題が新たに更新され、探究の過程が繰り返されるようにします。
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Point 02
社会的・職業的自立に向けて必要となる資質・能力を育成する
- 社会の一員として生涯活躍し続けられるように学校での学習と働くことの接続を意識します。
- 夢や目標の実現のため、進学して何を学び、何をしたいのかを大切にします。
- 働く意義や生きがいを基にキャリアについて考えます。
プラットフォームの目的
共創共学プラットフォームが目指すのは、学校と地域・企業等をつなぎ「地域一体でキャリア教育を推進する」こと。そのために学校と地域が互いに学び合い、持続的に支え合う教育の仕組みをつくることを目的としています。
特に、探究的な学びやキャリア教育を体系的に進めること、そして進学先や仕事を知るだけでなく、大人と子どもが対話を通じて価値観や生き方を共有し、将来どのように社会と関わっていくかについて学習を深めることに重点を置いています。

主な取り組み
プラットフォームでは、さまざまな形で学校と地域をつなぐ活動を展開しています。
- 総合的な学習の時間を中心とする探究学習の支援
授業でのテーマ設定やプログラム設計をサポートし、探究的な学びの質を向上。 - キャリア教育新聞
学校や地域の取り組みを紹介する情報誌を定期的に発行し、横のつながりを強化。 - 地域・企業等との協働プロジェクト
職場見学や社会人インタビュー、社会人対話、企業との共同商品開発などを通じて、地域企業と学校を結ぶ機会を提供。
写真:社会人らと生徒が1対1で対話した
「いきはたトーク」の様子(塩尻市立丘中学校)

成果と参加者の声
取り組みを通じて、すでにさまざまな変化が生まれています。
生徒からは「普段話せない大人の話を聞けて、自分の将来を考えるきっかけになった」との声が寄せられています。教員からは「地域と一緒に子どもを育てている実感が強まった」、企業の方からは「子どもたちのまっすぐな質問に、自社の存在意義を見つめ直す機会をもらった」という感想も。学校、地域、企業、それぞれに学びと気づきをもたらしていることが大きな成果です。
今後の展望
共創共学プラットフォームでは今後、さらに多様な地域プレイヤーを巻き込みながら、誰もが参画できる「学びの循環」を広げていく予定です。継続的に活動を続けるための制度化や資金基盤づくりも課題であり、将来的には「塩尻モデル」として全国へ発信できる仕組みを目指しています。
共創共学プラットフォームは、子どもたちの未来を地域とともに育む挑戦です。
「子どもたちと関わりたい」「地域に貢献したい」と思う方を一人でも、一事業所でも多く増やしていきます。
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/39/44129.html(塩尻市キャリア教育HP)
