キャリア教育の事例紹介
千曲市、地元企業、大学が創り出す“未来につながるものづくりフェア”
「千曲市内には誇れる技術を持つ素晴らしい企業がたくさんあるのに、地元の方々、特に子どもたちにあまり知られていないのでは…」
そんな問題意識から企業展示会「ものづくりフェア千曲」は始まりました。千曲市内の製造事業者で組織される「ものづくりネット千曲」と千曲市が連携し、地元の中学生に地域産業に触れる機会を提供しています。
地域の誇る技術を、次世代の子どもたちに知ってもらい、ゆくゆくは将来ここ千曲市の企業に就職してもらいたい—地域への誇りと創意工夫が詰まった取組みをご紹介します。
地域の若者と企業が繋がり、未来を創る
千曲市は、長野市と上田市の中間に位置し、千曲川の両岸に広がる平地と、その背後に連なる山地に囲まれた風光明媚な地域です。高速道路のジャンクションと幹線道路が集中する「交通の要衝」でもあり、精密加工業や食品産業など多くの製造業が集積しています。
そんな千曲市で「ものづくりフェア千曲」が産声を上げたのは2024年です。千曲市と市内の製造業で構成される「ものづくりネット千曲」が企画し、開催に結びつけました。
展示会のコンセプトは、“人をつなげて未来をつくる”。この展示会をきっかけに若者が地元の企業のことを知って興味を持ってもらい、ひいては地域製造業の存続と発展、人材の確保に繋がっていくことを目標にしています。


見て、触れて、学べる機会を子どもたちに提供
2回目の開催となった2025年は、製造業26社が出展。千曲市内の中学校2年生を会場に招待し、各企業が工夫を凝らして、ものづくりの凄さや楽しさを見て、触れて、学べる機会を提供しました。参加した中学生からは、「会社の名前は聞いたことがあったけど、実際にどんな事をやっているのか今日初めて知ることができた」「自分の将来を考えるヒントになった」などポジティブな声が多く寄せられました。
また、会場のレイアウトにも、千曲市の企業に親近感を持ってもらうための工夫を凝らしています。一目で市内に分布する企業の位置が把握できるよう、市内地図を模した設計を施しました。マットを敷き詰めることで千曲川や国道18号線を表現するなど、地域らしさを会場づくりで表現。こうした工夫もまた、展示会を盛り上げる要素となっています。


展示会当日の企業支援として県内の大学生が参加
本展示会の大きな特徴は、展示会当日の企業支援として県内の大学生が参加することです。学生の支援を希望する出展企業と企業への支援を希望する学生を繋ぎ合わせるため、事前にマッチングイベントを行い、当日は、大学生がまさに出展企業のスタッフになりきり、来場した中学生に”自社”の説明を行います。このような仕組みにより、中学生は比較的年齢の近い大学生と触れ合うことで、より楽しく、親近感をもって各ブースを回ることができます。一方、出展企業も、支援を受けるだけでなく、大学生と接点を持つことで、若者の考え方や価値観を直に知ることができるなど、参加者各々に様々なメリットをもたらします。まさに、産官学が一致団結して実現させている展示会なのです。

おわりに
今後は、さらに参加企業数を増やすなどして展示会の規模を拡大させていく方針です。参加した企業や来場した中学生、展示会当日に参加した大学生からも、今後への期待の声が続々寄せられています。展示会としての歴史が浅い分、無限の可能性を秘める「ものづくりフェア千曲」。千曲市の優れた技術を次世代へ繋げるべく、挑戦は続きます。

参加した子ども達が、地元には素晴らしい企業がたくさんあることを知ってもらえたら嬉しい。そして、そうした子ども達が一時的に地域の外へ行ってしまっても、いつか地元に戻ってくるその時まで取り組みを続けていきたいです!